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丁寧に鮮やかに描かれる画面の中のもうひとつの人生『牧場物語Welcome!ワンダフルライフ』レビュー

牧場物語Welcome!ワンダフルライフ

ジャンル:ほのぼの生活ゲーム
発売日:2023/01/26(PS5/Xbox X|Sは6/22、Steamは6/28)
発売元:マーベラス
対応ハード:Nintendo Switch/PlayStation 5/Xbox Series X|S/Steam
価格:5478円(税込)

※パッケージ版はNintendo Switchのみ

『牧場物語 Welcome!ワンダフルライフ』公式サイト

2003年にニンテンドーゲームキューブで発売された、『牧場物語 ワンダフルライフ』のフルリメイク作品。

ワンダフルライフは、今までにも、女の子主人公バージョンの『ワンダフルライフfor ガール』、オリジナル版にイベントなどを追加しPS2に移植した『Oh!ワンダフルライフ』が出ている。牧場物語シリーズは遊んだことがあるが、ワンダフルライフは初プレイ。

オリジナルの核となる面白さは残しつつ、現代でも快適に遊べるよう丁寧に調整された良リメイク。一風変わった牧場物語として、牧場で過ごす人生を描いたゲームとしてオススメです。

今回はSwitch版を遊びました。それでは、レビューいきます。

 

舞台は「わすれ谷」と呼ばれる山あいの小さな集落。スローライフに憧れる主人公は、父の友人タカクラに「牧場をやってみたい」と手紙を送り、移り住むことになる。という始まり。

このタカクラさんは牧場の敷地内に住んでいて、主人公に牧場のイロハを教えてくれる人。実質家族の一員。

他の牧場物語にあるような町の発展や、何か問題を解決するというのはない。ただただわすれ谷で動物たちや家族と共に牧場生活を送ることが目的。

 

基本的に畑で作物を育てたり、牛や鶏など動物の世話をして畜産物を取ったりしてお金を稼いだり、住人と交流していくのが主なゲームプレイ。流れはいつもの牧場物語と同じではあるが、今作最大の特徴によって、一味も二味も異なるゲーム体験になっている。

 

今作最大の特徴は、30年という長い月日を表現しているところ。近年のエンドレスに遊べる作品と違って(初期には3年などの期間制限のあるものもあったが)ワンダフルライフは全6章のゲームプレイでエンディングを迎える。ED後制限なしで遊べるモードもばっちりある。

30年といっても30年分プレイするのではなく、1年ごとに1章進む形式で、章の合間に数年経過し、青年→中年→老人期と変化が描写される。また、10日で1つの季節が移り変わるため、テンポ良く楽しめる。

 

牧場では、3種類の牛とヤギ・羊、鶏とアヒルそして馬を飼うことが出来る。今作ではオスも飼うことが可能。牛と羊は雌雄両方飼えば自然に妊娠し、鶏とアヒルは孵化させれば雛が産まれる「いきたたまご」が採れるようになる。また、牛とヤギは妊娠前にはミルクが採れなくなり、出産後はミルクの量が増える。ミルクの量は季節によっても(牛は種類でも)変動する仕様。

覚えることが多くて初めは戸惑うものの、小屋の出し入れは最初からベルで一気に出来るし、新しい道具を手に入れると格段に楽になる。

オリジナル版であった、寿命の概念や、牧場で産まれた動物は種付けしないと乳が絞れないシステムはなくなった。この変更は不満を持つ人もいるだろうけど、もし実装されていたら、他作品よりもややシビアな本作がもっとキツくなるだろうし、初めての人でも遊びやすくするためにも変更して良かったと個人的には思う。

牛だけはオリジナル版に近いリアルよりの見た目。これは変更されなくて良かったと思う。いつもの牛も可愛いんだけどね。

 

農業は通常作物が8種・果樹5種と少なく感じるが、品種改良システムのおかげで、最終的に他作品を凌駕する種類になっている。

品種改良とは、2つの農作物・果実同士(あるいは種)を掛け合わせ、新しい種を生み出すというもの。例えば、トマト+カブでトラディになる。さらに品種改良種同士を掛け合わせると珍種(珍樹)が出来上がる。

この品種改良がとても面白く、名前的にこの組み合わせかなとか、この2つまだ試していなかったなとか試行錯誤するのが楽しい。珍種(珍樹)は自分で名前を付けられるのも良い。組み合わせのヒントは住人の会話から入手出来る。ただ、名前で推測出来ない珍種はもう少しヒントがあっても良かったのではと思ってしまう。加えて品種改良はまれに失敗するので事前のセーブを勧めておく。

1月が10日しかないため、一度の失敗が大きく作物の収穫日数をよく考えなければならないのも今作の特徴。ゲーム内だと成長日数は大まかにしか書かれていないため、実際に植えてみて経過を観察し、自分の経験値を貯めていく手探り感は他作品にはない魅力がある。

 

住人との交流は、30年の大きな時間の流れのおかげで変化をもたらしている。初めから大人の場合は白髪になってしわが増える他に大きく変わることはないが、子どもたちは成長し、言葉遣いや考えも変わっていく。

自分の息子、もしくは娘も例外ではない。子供を連れ回し、様々な人や自分の仕事姿を見せている最中、甘えてきたら何度でも頬ずりしている最中、「本当にこれでいいのだろうか」「可愛いけど甘やかしすぎかな」など本気で悩む。そして来ると分かっていた反抗期に落ち込み、その後の成長した姿に感動する。この体験が味わえるのは本作ならではだろう。

一年目までに結婚する必要があるため、恋愛要素は忙しなく感じた。性別関係なく恋愛結婚可能かつ、イベント条件がやや厳しいこともあって全員の恋愛イベントを回収するのは、攻略を見ないと難しい。

住人イベントもオリジナル版から70種類増えたということで、似たようなパターンのもあるが充実している。ただ、恋愛イベント同様、何時から何時までの間にこのキャラがいる時にここに行くなどの条件が厳しく、意識しないと見落としがち。

住人たちは何か問題を抱えていても、根本的に解決するわけではないし、町の高齢化はどんどん進むし一種の閉塞感すら感じるが、この独特の寂しさは癖になる。

近年の作品と比べるとセリフ数は少ない。しかし場所と時期ごとに変化する会話は何回も話しかけないと聴けないものもあり、終盤で初めて聞いたセリフもあった。やることがなくなってきた最後の方は、イベントが増えたりして飽きさせないつくり。

子どもの成長とパートナーとの関係が光る家族のイベントも魅力の一つ。特にタカクラさんの扱いが良かった。家族にタカクラさんも入っていることに感謝しかない。

季節イベントは4種類のみで若干物足りなさもあるが、花火と聖夜祭は年月の積み重ねによる変化があって良い。住人との交流・家族と過ごす日々、そうして迎えたエンディングはグッと胸に来るものがある。

 

他にもこれらの良い所を邪魔しないロードの速さと少なさ、カクツキもほとんどない。立ち絵こそないものの、キャラモデリングが可愛らしく表情もはっきりと分かる。作物の成長過程も見ていて楽しい。

 

気になったところとしては、後半少し暇になってしまう点。いつもの牧物のつもりで効率を重視すると暇になりやすいかもしれない。

細かいところだと、餌置き場に動物が重なっていると入れづらい点。狭い屋内だと扉を調べようとして、キャラに話しかけてしまうことが多発する点。腕組んだり、腰に手を当てたりポーズをしているとプレゼントを受け取ってくれない点。少し説明不足な点。くらいである。基本的に快適なゲームプレイだった。

 

 

のんびり&図鑑埋めプレイで100時間ほどの大ボリューム。牧場生活を通して、一人の人生を体験出来る、まさしく「牧場物語」だと思わせてくれるゲーム。オリジナルの魅力を今に向けて鮮やかに色を付け加えたゲームでした。