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冒険心と想像力を掻き立てるRPG体験『世界樹の迷宮ⅠHD REMASTER』レビュー

世界樹の迷宮ⅠHD REMASTER』

ジャンル:3DダンジョンRPG
発売日:6月1日
発売元:ATLUS
開発元:ATLUS
対応ハード:Nintendo Switch/Steam
価格:単体4467円/3作セット8980円

世界樹の迷宮I・II・III HD REMASTER - 公式サイト

 

世界樹の迷宮は、2007年にニンテンドーDSで発売された3DダンジョンRPG。当時衰退ぎみだったダンジョンRPGを、ウィザードリィをベースに現代のエッセンスで蘇らせようとしたのがシリーズの発端。下画面にマップを映し自分で書かせるという2画面を活かしたシステムと、可愛い見た目に反した骨太なゲームバランスが話題を呼んだ。

 

リマスター移植ということで内容自体はそのままだが、HD画質への対応以外に様々な点がリニューアルされている。

元々2画面だったのが1画面になるにあたってUIの調整と、横歩きやオートモードの実装セーブスロットの追加など遊びやすく改良されている。他にも各職業に一つずつ新イラストと難易度が選択可能になった(オリジナル版は最高難易度の「EXPERT」)。難易度は街でいつでも変更可能でペナルティも一切ないため、レベル上げの時だけ難易度を下げるなんてことも出来る。

シリーズ一作目のため、やや不親切なところや理不尽なところはありつつ、今でも安定した面白さがありました。

Switch版でプレイ。今回は難易度EXPERTでメインストーリークリアまで。6層クリアした際は追記します。それではレビュー行きます。

 

舞台はとある地方の小さな街エトリア。そこには、大地の裂け目から地下深くへと繋がる巨大迷宮『世界樹の迷宮』が存在していた。富・名誉・権威あるいは冒険心、様々な夢を見て今日もある冒険者がエトリアの門をくぐるのであった。

 

街でパーティ編成や装備の購入など冒険の準備。準備が出来たらダンジョンでバトルや装備用の素材を集めながら探索。合間にクエストやイベントを挟みつつ、基本この繰り返しのストイックなゲームプレイとなっている。

 

本作では、まずギルドとギルドメンバーを作成するところから始まる。メンバーは7つ(途中で2つ追加され9つ)の職業、職業ごとに5つある見た目を選択し、名前を付けてキャラメイク完了。最大5人までパーティが組める。前衛・後衛の概念があり、バランスよく組み合わせることで探索しやすくなる。

日向祐二氏の可愛らしいキャヨシクターデザインは、ハッキリとした個性を感じられて物語を想像しやすい。この名前にはこんな意味があって……この2人は兄弟で……などキャラの背景を考えてもよし、他作品の好きなキャラに当てはめてもよし、友人や知り合いを迷宮に連れ回してもよし、一刻も早く迷宮に潜るため職業そのままの名前にしてもよい。

またリマスター版では職業ごとに一人追加され、さらに職業に囚われず見た目を設定出来るようになった。見た目と名前はいつでも変更可能。

 

パーティを組んだら迷宮探索へ。自分で地図を書きながら探索するのが本シリーズの特徴。オートマップ機能も実装されているため、バトルやストーリーだけに集中したいという気持ちにも応えてくれる。

オートモードには床だけを塗ってくれるタイプと、床と壁を両方書いてくれるタイプの2種類。落とし穴や採取ポイント、隠し通路などは自分でアイコンなどを配置する必要がある。マッピングはプレイヤーごとに個性が出るところで、最低限の人もいればメモ機能を使ってロールプレイを楽しむ人も。

階層ごとにガラリと変わるダンジョンは、ダメージ床や落とし穴など各階層ごとにトラップが仕掛けられている。ショートカット用の隠し通路や強敵を避けながらの移動など少しずつ探索の面白さを学べるのが良かった。

徐々に出来上がっていく地図と、その地図が導いてくれるゲームプレイは冒険している感が強く味わえる。

本作ではマッピングにコントローラーでの操作とタッチ操作(指かタッチペン)の2つが実装されている。

コントローラー操作は、慣れが必要ではあるが持ち替える手間がないことがいいと感じた。引き間違えもしにくいのも良ポイント。

一方タッチ操作はオリジナル同様、直観的でより地図に書いているという没入感が得られると感じた。タッチペンや指で画面が隠れて見えなくならないように、線を引いた位置と実際に引かれる線の位置をずらす機能も搭載されている。利き手の設定もあり。Steam版ではタッチ操作に代わりにマウスで地図が書ける。

コントローラーでも書きやすく操作関連には特に言うことはないが、街で地図を見れないことは残念。

 

世界樹シリーズでは、オーソドックスなコマンドバトルが採用されている。バトルはランダムエンカウントF.O.Eという強大な敵だけ、シンボルエンカウント形式で探索中にも確認できるようになっている。

このF.O.Eは決まったルートを徘徊するものや、追跡してくるものがいて戦闘中に乱入してくることもある。初遭遇時の段階だと瞬殺されるため、基本的に行動パターンを見極め戦闘を避けて探索するのがセオリー。操作ミスでF.O.Eにぶち当たって死を覚悟するのもお約束。

普通の雑魚敵も厄介で、気を抜くといつの間にかやられていたなんてことも。特にスキルが揃っていない&TPが少ない序盤の方がキツイ。中盤や終盤が楽かと言われたら全然そんなことはないのだけど。それでも理不尽すぎることはなく(多少の理不尽はある)時々、この雑魚敵やたら強くない?となりながら成長を実感出来る絶妙な難易度。

バトルは属性や状態異常を強く意識させる作りとなっている。状態異常や封じと呼ばれる行動制限(例えば頭を封じると呪文や息攻撃が出来なくなる)が強く、相手の耐性・行動に合わせて対策を練るのが面白い。リマスターでは強化・弱体の状態が確認しやすくなった。

 

キャラ育成は装備と、スキルツリーによるスキル入手やパラメーター強化。それぞれ職業ごとに個性豊かなスキルツリーが設定されている。レベルアップでスキルポイントが手に入るものの、通常のプレイだと全スキルレベルマックスにすることは不可能であり、より選択が重要になってくる。

例えばソードマンなら、単体の敵に有効な斧スキルか、複数の敵に有利な剣スキルか、ボス特化型か雑魚殲滅型として育てるか選択できる。一応バランスのいいパーティ編成を勧められるが、どの職業でもクリア可能で、レベルを下げてスキルポイントを振り直すことも出来る。

 

ストーリーに関係ない酒場で受注するクエストは、バトルと素材を取ってくるものが中心だが、一人で強敵を倒すなどの変わったものも。世界観の掘り下げだけでなく他の冒険者や街の人の様子も垣間見られる。一部のクエストが理不尽だった以外は楽しめた。

 

ストーリーは台詞とゲームブック調のテキストが特徴で、必要以上は語らず行間を読ませる感じ。要所を押さえたテキストで思ったよりシビアな物語が楽しめる。登場人物は多くないものの、階層ごとに街の人のセリフが変わったり、酒場のクエストで世界観やストーリーの補足がある。意外性のある展開もあり飽きが来ない。

冒険に欠かせないのが、古代雄三氏の魅力的な音楽。穏やかなのに恐ろしさとどこか寂しさのある迷宮BGMが魅力的なのは勿論、かっこいいバトルBGMは前半と後半で変わり、盛り上げてくれる。

 

元の2画面から1画面になったことで、半分は迷宮、もう半分は地図(地図を消すことも可能、バトルや街では消える)の画面構成。やや強引にまとめたようにも思えるが、一応携帯モードでも迷宮が表示されている大きさはDSの画面と同じ大きさ。それでも最初のうちは窮屈に感じるかもしれない。

 

シンプルながらも今でも通用する面白さがある。難しいからこそ成長し困難に立ち向かった先にある達成感。想像力を掻き立てるテキストとキャラクターデザイン。冒険を彩る数々の音楽。自分が(あるいは自分のキャラクターが)冒険しているというRPGの楽しさを快適さでサポートする、クリアまで60時間の時間泥棒の一作。今後のシリーズ展開への確かな第一歩を感じた。